恐れと防衛

人を見ていて感じることがあります。これはジェラテリア云々ではなく、私の17年の経営経験から見えることなのですが、恐れを抱き、守りの姿勢が強い人は成長が難しいのです。二十代はともかく、ある程度大人の経験を積んでくると、どうしても保守的な気持ちが先に立ちます。それは変化を恐れる気持ちともいえるでしょう。

恐れとはなんでしょうか。「やったことがない」「ちょっとやってみたら、しんどい」「とにかく先にルールを決めたくなる」という傾向で、新しいことにチャレンジをしているようで、実は守りに入った態度です。

変化を好まない気持ちが、予想外の事態を引き起こす恐れを産みだし、そして防衛一色になるのです。これは国のレベルでも同じことで、今、某国が猛烈に「防衛」という名の言葉の応酬で、いかにも攻めているように見せかけている様子と同じように、人のレベルでも一見積極的に、もしくは改革的に見えるときには注意が必要です。これらは巧妙に偽装され、さも外に開かれているように見えるからです。

お恥ずかしい話しをしましょう。私は、4月1日のプレオープンまで、ジェラートのディッピングをカップやコーンにしたことはありませんでした。撮影のため、何度かそれらしいことはするにはしましたが、実際にやったのはお客様が目の前にやってきた瞬間からでした。もう26日も経過しましたので、今では狙った通りの重量をディッピングすることができるようになりましたが、最初は笑いながら、心は緊張していました。

ディッピングの前にはジェラートを練る作業があります。体の使い方が分かっていない状態で2週間を過ごし、右腕は悲鳴をあげました。しかし、痛みが出てくると、力が入らなくなりますので、力が抜けて上手に練ることができるようになり、今は痛みがありません。コツをつかんだのです。

お持ち帰りのふた付き容器へのジェラート詰めの作業も、このHPで「お持ち帰りもスタートします」といって、実際に注文を受けてから繰り返しました。当然最初はへたくそで、カップの周りをしっかり拭く作業が必要でしたが、もう今はそんなことはしなくてもよくなりました。これもスパチュラの使い方とカップの持ち方にコツがあり、分かってしまえば簡単なことなのです。

ジェラートのストラクチャーを勉強し始めたのは、昨年の11月からです。機械の操作もおぼつかないまま、試作を繰り返し、無謀なことに2月のイタリア最大のジェラート展示会にも16品を出品しました。衆人環境、しかも慣れない機械を操作して、なんとか6時間で18アイテムを作り上げました。そのあと、このプレッシャーと緊張からか、10日間ほど熱が下がりませんでしたが、今はいたって元気です。

ジェラートの勉強の大半は英語です。私はまともに英語を勉強したことがなく、貿易業をスタートしてから、英語が堪能なスタッフや相手が何を話すのかをじっときいて、そのままオウム返しをして練習しました。ましてや、ジェラートの勉強には数学的・理学的要素が必要で、かけ算や割り算を英語で表現したことはなく、聞いたこともありませんでした。しかし、じっと聞いてまねしていると、なんとかついていくことができるようになりました。今では、おそらく英語で学んだこと以上の知識とアイディアに恵まれるようになりました。

 

こんなに恥ずかしい話しをいっぱいするのには訳があります。

私がいつも思っていることは、守りに入った瞬間、人間は退化していくこと、そして、猛烈なプレッシャーとストレスが、新しい道を切り開くことに繋がるのです。

ストレスは悪いことだから、というのは一面の真理ですが、私はそうだと決めつける気持ちはありません。ストレス自体にいいも悪いもないのです、ただその反応をどうするのか、それだけが私たちの自由に繋がる場所でもあります。

 

お客様を前にして、緊張しながらアルバイトのように一生懸命やる。とにかく必死にやっていると、必ず道は開かれます。これは、私が短い人生で経験した最も尊い原則です。

何かやるまえに「それをすれば、こういうことがややこしい」「これをやるなら、先にこれだけは決めなければいけない」という話しは、私が聞いたら単なる逃げにしか聞こえません。ジェラテリアという仕事に全力で取り組むのも、お客様に喜んでもらいたいという気持ちとともに、自らが少しでも進化成長していけるようにというチャレンジでもあります。

ときに「何もしたくない」「誰とも関わりたくない」と思う時間もあります。私は聖人君子にはなれず、ただの普通の人です。ただそんなときも、隠れ場所を探すよりも、自分ができる何かを一生懸命しようという気持ちが沸いてきます。

たぶん、少なくない人が私のために思いを運び、そして祈ってくれているのだと思います。厚かましくも、そういった気持ちが私の魂に、新しい天職をもたらしてくれました。

まだまだ至らないことだらけですが、私が今まで書いてきた心の薬としてのスイーツを創り出すこと、そしてフードバリアを超えるという信念を果たすまでは、とにかく全力で突っ走ります。

下の彼は、私の分身です。

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